英検や大学入学共通テストの英語が大きな転換点を迎えています。つまり、「どれだけ知識があるか」から「どれだけのことができるか」というようにシフトしています。「やっとか!」いったのが正直な感想ですが、ただそもそもこの英語力を数値化しようなんて言うのは野暮な話で、「どれだけのことができるか」ということはかなり主観的なものです。 英語は大したできなくても、個人旅行を大いに楽しむ友人の話 私の友人で、頻繁に海外旅行に行く人がいます。その人はいつも自分で航空券やホテルの手配をして、現地でも生じる問題に首尾よく対処できる人です。そのかたが面白いエピソードを話してくれました。アメリカのサンフランシスコに行ったときに、タクシーに乗ったそうです。彼は片言の英語でそのタクシードライバーと話すのが好きで、目的地にまもなく着くというときに、"You are the best taxi driver in America." と言ったそうです。そうするとそのドライバーさんは大喜びで、さらにその私の友人は"Because you are the first taxi driver I met in America." というようなことを言ったそうです。わかりますよね。アメリカで初めてタクシーを利用したので、その人以外に比較の対象がなかったので、「あなたが一番だ!」と冗談を言ったというわけです。そうすると、そのタクシードライバーはさらに大喜びし、たいそう親切にしてくれたとのことです。 できるビジネスマン風の人が全然英語を使えていない話 私自身仕事やプライベートで海外に行くことが多いのですが、特にニューヨーク便は一人でビジネスでニューヨークに行かれる方も多いように思います。ニューヨークへは最近、日系航空会社を使っていますが(機内食が美味しいので)、入国審査でも係員からの問いかけに無視、帰国時のJFK空港でのチェックインカウンターでも無視を貫く人がしばしば見られます。観光客ならまだしも、明らかに仕事でニューヨークに来ている人です。それなりの英語力があるとみられて、会社からニューヨークの出張を任されている人なのでしょう。でもその「英語力」というのは「知っているだけ」で使えない英語力ということになります。 本当に必要なのは「英語力」ではない もちろん「英語を知って」いればそれに越したことはないのですが、それ以前に人としてコミュニケーションが取れなければ、せっかく英語を知っていてもまったく意味がありません。私も含めて、英語教育に携わる人間はその部分を自分はできているのかと自問し、生徒にも人としてのコミュニ―ケーションを教える必要があると思います。 そもそもコミュニケーションって何? コミュニケーションには言語コミュミニケーション(Verbal Communication)と非言語コミュニケーション(Non-verbal Communication)があり、そのうち言語を使ってコミュニケーションをするのは3割ほどといわれています。残りの7割は、顔の表情やジェスチャー、あいづちなどの非言語コミュニケーションです。言語で伝えられない部分はこの非言語の部分でコミュニケーションをとっていることになります。言語としての英語を教え込むのは学者さんになりたい人だけに任しておいて、我々英語教育に携わる人間は、コミュニケーションの取り方を訓練するように教える方向にシフトしていくべきだと思います。 |